2010年2月アーカイブ

住宅を断熱気密化することで、省エネルギー化することはファーストステップにせよ、実のところ断熱気密化した住宅のエネルギー消費量がどうなっているかという実態調査をしてみると、住宅の全体でのエネルギー消費量は増加していることが多い。

この理由はどうしてかいうと、住宅の断熱気密化によって冷暖房のセントラル化が可能となるため、冷暖房をする居住空間の面積的な拡大がされるからである。

とはいえ、今まで住んでいた住宅と比較すれば、居住空間の快適性は遥かに増しているし、また支払う光熱費で考えれば、今までの住宅の居住空間の何倍もの面積を冷暖房することができるから、合わせ考えればお得感的に光熱費が掛からない住宅とついつい言ってしまいたくのが本音かと思う。

このようなことを言うと、たくさんの反論が出てくることは目に見えているが、断熱気密化して従来よりもエネルギー消費量が少なくなったという住宅の熱環境の測定してみると、PMV±0~0.5(性別、年齢、被服量、室内表面温度、空気温度、湿度を加味して、人が快適か否かを判断する数値指標。PMV±0~0.5という数字は、例を上げれば外気温度が-10数℃でも室内で半袖Tシャツで横になっていても、寒くもなく暑くもないというイメージ、北欧の住宅の室内環境はだいたいそうなっている)というような快適域の室内空間はほとんど皆無で、こういう状態に保って以前に居住していた住宅と同様なエネルギー消費量、もしくはされ以下の断熱気密住宅というのはめったにお目に掛かれないのが実情なんですね。

このような環境の室内気候を実現するとなると、必然的に暖房温度を高くしたり、冷房温度を下げたりしなければならないわけだが、そうなると必然的にエネルギー消費量が増加することになるわけで、だとすればその分、どこかのエネルギー消費量を削減すればどうにかつじつまが合わせることができる訳なのだが、果たしてそんな方法があるのか・・・

実は、住宅の中でエネルギー消費量が最も大きいものが給湯用のエネルギーで、このエネルギー消費量を少なくすれば辻褄を合わせることも可能で、あるいは照明など電灯エネルギーの消費量を減らせばもっと辻褄合わせをすることができる可能性が生じることになります。solar_02.gif

                                       住宅で使われるエネルギーの内訳割合

ただし、エコ・キュートは深夜電力メニューの電気コストでお湯を沸かすのでエネルギーコストを減らしても、夜間に深夜電力を大量使って給湯用の熱を作るため、二酸化炭素を削減することにはならず、環境に負荷をかけることになるので、環境のことを考えれば良いとは間違っても言えません。要は、発電所で発電量を調整することはできないので、深夜に余剰電力を叩き売っても買ってもらおうと考えた結果の産物で、エコはエコでもエコロジーではなくエコノミーのエコなんですね。 捨てるのがもったいないので、使ってもらおうというのであれば、ちょっとはエコロジーなのかも・・・・

そんなことで、環境先進国では、可能な限り太陽熱のような再生可能な自然エネルギーで、必要な給湯用エネルギーを確保する方法が普及しているわけで、冬に日射がないようなスウェーデンが世界でもっとも太陽熱利用が普及しているということをほとんどの人は知らないと思います。 ヨーロッパでは、低温で日射量が少ないところでも、十分に給湯用としての熱が造れる技術が普及しているのですが、残念ながら今もって日本ではそういうシステムがありませんでした。そこが原点となって、世界第二位の熱源設備パーツメーカーと提携し、冬でも高温を造れるアトムのソーラーボイラー開発プロジェクトがスタートした訳です。

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           エネルギー消費量を半分以下にした(月1000ℓ⇒500ℓ)にした施工例

販売しているSOLAR BOILARの冬季における性能の実測をしているのですが、2月13日のデータをグラス化してみました。

温水タンクについては、補助熱源などをまったくいれずに放置したまま、この一ヶ月ほど状況を見ています。

12日以前は天候が悪かったため、13日の朝の温水タンクの温度は午前8時32℃でしたが、屋根に設置したバキュームコレクターは午後二時半ごろには300lの温水タンク温度を50℃近い温度に昇温させています。

今まで、盛岡のような寒冷地では、冬季には太陽熱を集熱して使うことができなかったため、寒冷地でも給湯や暖房に利用できるソーラーシステムの開発がテーマだったのですが、十分に対応ができるシステムにすることができました。

タンクは、早朝には外気温度がマイナス5℃前後になる外部においていますから、結構、過酷な条件での冬季試験です。

冬季データ.JPG

今日から、バンクーバー・オリンピックが始まりました。バンークーバーは比較的温暖で、冬といっても本来あまり寒くはないところですね。

カナダのナショナルプロジェクトR2000(本当か否かは別として、西暦2000年にゼロ・エネ住宅を普及させようというプロジェクト)が進展していたときに、多くの超高性能断熱気密住宅が建設され、ツーバイフォー住宅を日本に移入していたカナダと住宅の高性能化を目指す日本との思惑が一致し、日加学識経験者会議が十数年近くに渡って相互の国で開催された経緯があり、委員会の委員としてそれに係わった思い出があります。

当時、日本では、壁体ないの断熱材に蓄積された湿気を夏季に排湿することを前提に、外気側外装材の内側に通気層を設けることは不可欠とされていましたが、カナダにおいてはツーバイフォーの面材の合板表面防水紙を張り、それにスタッコ(モルタル)を塗るという施工方法が一般的でした。

よく、バンクーバーに行っては、住宅建築の現場をレンタカーを借りて見て回りましたが、室内高温側の気密層はこれでいいの?というほど欠損が多く、熱湿気同時移動方程式を使わずとも、定常計算で結露計算をすると外壁裏表面に結露水が蓄積する結果となり、本当に大丈夫なのかと考え込んでしまったものです。

結果、何年後かに、バンクーバー付近で建築されたR2000の住宅の外壁が剥がれ落ち、内部を調査してみると合板が腐朽していることが多いことが判明しました。その結果、面材の合板表面と外壁材の内表面の間にレインスクリーンと呼ばれる通気層が設けられるようになりました。レインスクリーンの効果は、外壁表面からクラックなどを通じて浸入した雨水が、合板に至らずに下方へ落ちて合板を浸水させないということと、室内側からの水蒸気を円滑に排湿させるというものですが、今でこそ水蒸気が円滑に通過できるような透湿性防水シートが用いられているものの、当時はそれでも水蒸気の透過性が良くない防水紙などを合板表面に張るなどの施工例が多々あり、中古住宅の流通が多いカナダでもR2000住宅は買わないのが賢明という時期がありました。

さて、今日の盛岡は相変わらず寒く曇天です。でも、ソーラーボイラーで給湯タンクの温度は50℃を超えていました。L1000241.jpgのサムネール画像

アトムの事務所前に設置されているコレクターの現在状況です!( AM 11:30 )

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天候:曇り

昨日は、「建国記念日」だったので、温水タンクの水を入れ替えたところ、

午前9時で水温は8.8℃でした。でも、二時間後の午前11時半には水温はもう30℃を超える温度になっていました。

外気温:2.2℃

コレクター温度:36.4℃

タンク温度:32.9℃

あいにくの曇り空ですが、コレクターはしっかり集熱してポンプもたまに運転しています。

 

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